不思議の国の道路運送法 3
予定を変更して、タクシーについて一言。
タクシーやバス事業の存在をまさに規定しているのが、道路運送法である。タクシーやバスは、船舶や電車、飛行機と同様に重要な移動手段であり、陸上交通のインフラ設備として位置づけられている。
現在の700万人と言われる買い物弱者や、あるいは毎日報道される高齢者の交通事故対策に真っ先に対応すべきは、もちろんタクシー事業者でありバス事業者である。
この問題に取り組むべき第一人者は彼らであり、事業者にとってはこの100万人にちかい人々を需要とみれば、この状況はビジネスチャンスとしても捉える事が可能である。
しかし、残念なことにタクシーやバスの事業者が主体的に、この問題の解決に寄与する事はあまりない。多くの場合が、自治体によるコミュニティバスの運営やタクシーチケットの送付など、税金や補助金をあてにした対応がなされているに過ぎない。
買い物弱者がタクシーを利用しない、あるいは利用できない理由は、唯一つ、タクシー料金の高さにある。高齢者にとって、日々の生活でタクシーを利用する事は経済的負担が大きい。
それでは、タクシー料金を事業者の努力によって下げることができるかと言えば、それは不可能である。
何故か?タクシー料金は国によって決められている許認可運賃であるからである。
タクシー料金の値下げは、タクシー事業者の勝手にはできないのである。
一方でタクシー事業者も経営が楽な訳ではない。許認可運賃の下で左うちわの経営を行っているわけでは決してない。実際にタクシー運転手の年収は他の事業の年収に比較してかなり低い。
タクシー事業自体も少子高齢化社会では、利用者は減少している。
そこで、各事業者はタクシーの利用に関し、様々な付加価値の創造に苦心している。例えば、観光タクシーやおもてなしタクシー、あるいは妊婦タクシーや子供送迎タクシーなど様々な場面に特化してサービスの充実を図っている。
しかし、ここではっきりさせておきたいことは、肝心の買い物弱者に対する対応は、事業者側から全く行われていない事である。買い物弱者にとって必要なことは、様々な付加価値では無く、タクシー事業にとって求められている基本的なサービス 地点間の移動 である。
この点に目を瞑りながらタクシー事業を陸上交通のインフラであるとして主張し、Uberを始めとするライドシェアアリング等の新しいモデルを排除し続けることは全くおかしな話である。
タクシー事業者は現況を把握し理解したうえで、現状のままでは買い物弱者に対応する事ができない事をきちんと明言したうえで、道路運送法の改正も視野に入れて、ライドシェアリングのような新しいモデルについて協議すべきである。
結局、タクシー事業者の主張によって、一番被害を受けているのは買い物弱者と言われる高齢者に他ならない。
不思議の国の道路運送法 2
またまた、道路運送法について。
少子高齢化社会を迎えて、買い物弱者は全国に700万人と言われています。今後、この数字は高齢化更なる進捗に伴い大きくなることが当然予想されます。
買い物弱者に求められているのは、商品を手に入れる方法ではありません。買い物に苦労を感じている人の多くは、同時に病院やその他の外出にもストレスを感じています。
「買い物弱者」とはすなわち「お出掛け弱者」でもあります。日常の外出が困難な状況にある人々です。
買い物弱者が必要としているのは、外出するための移動手段です。私たちが日常で利用する自家用車の代わりとなるものです。
一般的に、自家用車の代理となるのはタクシーです。700万人の買い物弱者とは、まさにタクシー事業者にとっては、需要に他なりません。
ところが、タクシー事業者はこの700万人の需要にこたえることができません。なぜでしょう?
理由は、非常に明快で、タクシー料金が高価である事。タクシー事業は許認可制である事。そしてタクシー事業を保護しているのが、道路運送法です。
突き詰めれば、道路運送法が悪いのです。
この法律の下で、買い物弱者に対応する方法は2つです。
一つは、タクシーを利用する高齢者に自治体等から補助を出すことです。極端に言えば医療費のように個人負担が2割とか3割にすれば買い物弱者問題は解決します。もちろん財政は破綻するでしょうが・・・。
二つ目は、ボランティアによる送迎です。利用者から乗車料金を取らなければ、道路運送法の適用外となります。全国には、多くのNPOがボランティアによる高齢者の移送を行っています。
実は、ここが道路運送法の面白い点です。道路運送法の適用を受けずに移送する方法としては、やはり二つあります。
一つは、前述した利用者から料金を貰わない事。もう一つは、以前にブログにも記述した、車両と運転手を別々に分けて利用する事です
あなたが、自家用車を使って無料タクシーを始めた場合、これは道路運送法に抵触しません。しかし、この行為に、協賛やスポンサーが付きそちらから金銭を得ている場合は、たちまちグレーとなります。つまり、道路運送法では、ある人を移送して、直接間接を問わず金銭を得る行為は違法であると解釈します。
タクシー事業者「客を運んでカネを貰っている以上、わしらの商売の邪魔や、ボケー」
と、言う事です。
わかりやすいと言えば、わかりやすいのですが・・・
ボランティアによる買い物弱者対策は自治体も奨励して、全国で行われています。実際に行われる際は、完全に無料ではなく実費、すなわちガソリン等の消耗代費は徴収しています。
しかし、全国に700万にと言われる買い物弱者問題をボランティアの努力で解決しようというのはやはり無理があるでしょう。利益が得られないうえに、交通事故の際のリスクも負っての行為は、負荷が大きく持続性の観点からも問題が大きいと思われます。
もう一つの、車両と運転手を別々に分けて利用する方法は、それぞれが適正な料金を利用者から貰うことが可能ですが、こちらについては、別に記述します。
タクシー事業者は、決して法外な利益を上げているわけではありません。運転手の平均収入は、他業種と比較しかなり低廉です。タクシー事業者も買い物弱者問題に当然関心があるでしょうが、それに向き合うことができない理由はただ一つ、道路運送法にあります。
道路運送法ががちがちに縛りに縛っているため、タクシー事業者は動こうにも動けないので、買い物弱者は増え続けるばかりです。
規制緩和が行われることはまずないでしょう。道路運送法が改正されるには、自動運転車両の登場を待つほかありません。引き続き高齢者の事故は増え続け、買い物弱者問題が解決する事はありません。